大人は泣かないと思っていた

寺地はるなさんの短編小説集。

昔は自己啓発系の本をよく読んでいたが、最近は、小説を読むのが好きだ。自己啓発系の本にも良い本はあるのだが、ハズレも多く、特に自分の自己主張をゴリゴリに押してくる飛び込み営業系は読んでいても疲れる。それに比べて小説は、自分以外の人生を経験できるみたいでよい。確かに小説にもハズレはあるのだが、僕の場合は、ミーハーなので、基本的にベストセラーとか、本屋大賞を取った本とかを読んでるのでハズレは少ない。

話が大幅にズレてしまったが、「大人は泣かないと思っていた」は、登場人物が何人かいて、それぞれの登場人物が主人公になって物語が語られる短編小説。その中の「あの子は花を摘まない」という小説は、40代後半で離婚し、旦那と子供を置いて一人暮らしをしている広海が主人公だ。広海の部屋の隣人は、30代で離婚はしていないが、同棲していた彼氏と別れて同じく今は一人暮らしをしている。広海が隣人と話をするシーンで、はっ!となった。隣人が彼氏と別れた理由を聞かれて、こう答える。

「一緒に暮らしていて、どちらも仕事をしているのに料理を作るのは常に自分だ、掃除も洗濯も自分がやっている、その不満を伝えれば、わかったよ、手伝うよ、と来るわけですよ。おかしいでしょう?自分が住んでる部屋の掃除だし、自分が使ったタオルや自分がはいたパンツの洗濯なのに、手伝うって」と。


言ってる・・・。


嫁さんがバイトを増やすと言った時、嫁さんの体調が優れない時、僕はいつも「手伝う」という言葉を口にしていた。子供が「ママ、お手伝いするー!」とか、仕事の終わらない後輩に「手伝おうか?」と言うのはよい。でも、夫婦は二人で家族を支えていくパートナー。それを普通になんの疑いもなく「手伝う」って言っていた。悪気はない。てか、悪気がないのが、余計にタチが悪い。

嫁に限らず、こういう空気の読めない発言をしてしまうことが僕には往々にある。自己中心、自意識過剰、自分本位のこの性格が人の気持ちを考えない発言となって出てしまう。

それでも、明日には「手伝う」って言ってしまうのだろうな。


時をかけるゆとり

めちゃくちゃおもしろかった!

朝井リョウの「時をかけるゆとり」。デザインユニット、MUTEのボケ担当、海野さんオススメのその本は、最年少直木賞作家である著者によるエッセイだ。

僕は小説も好きだが、小説家の書くエッセイは当たりが多い。

特に、

「時をかけるゆとり」朝井リョウ

「この話、続けてもいいですか?」西加奈子

「ビロウな話で恐縮です日記」三浦しおん

この3冊は鉄板だ。

僕はもともと読書家ではなかったが、10年ほど前に鬱になった時、すがるような気持ちで本に走った。鬱の辛さは会社の同僚や友人など、誰にも話すことができない。僕は自分の辛い想いを嫁さんにぶつけるようになっていた。ところが、嫁さんにもそんな僕を受け入れるのにいっぱいいっぱいになってしまい、嫁さんにも話すことができなくなった。ストーンと深い穴に落とされたような気持ちになった。

そんな時、たまたま子どもと行った図書館で、自己啓発系の本を手に取った。たぶん、人生が辛くなった時に読む本、みたいな本だったと思う。その本を読んでから、僕は自己啓発系の本を貪り読んだ。本を読むことで心が楽になった。それから、小説やビジネス本など、興味のある本をいろいろ読んだが、いろんなことに悩んでいる人は、この3冊を是非読んで欲しい。きっと、悩んでいることが馬鹿馬鹿しくなるに違いない。

人に合わせず、自分らしく生きることが、どれほど楽で、これでいいのだ!と思わせてくれる。

必読!


ふがいない僕は空を見た(ネタバレ)

図書館で借りたい本を検索機で探す。

借りたい本が全て貸し出し済み。かなり前に読もうと思っていた、ふがいない僕は空を見たを借りる。

小中高とイジメにあい、大学で声をかけられた男性と関係を持ち続け、好きでもない人と結婚したあんず。アニメとコスプレが唯一の愉しみのあんずは、街で見かけた斉藤くんに声をかけ、斉藤くんにコスプレをさせ、台本通りにセックスをするよう「買春」をする。

ふたりの行為は隠しカメラで撮られ、斉藤くんの学校にまでばら撒かれ、斉藤くんは次第に引きこもっていく。

斉藤くんの友達のセイタカは、幼い頃に父親が自殺し、実の母親も男を作って家を出る。残されたセイタカは自殺した父親の母であり、認知症のおばあちゃんを僅かなアルバイト代で養い、面倒を見る。

セイタカのバイト先の先輩である田岡さんは、医者の家に産まれ、有名大学を卒業して、出来の悪い少年少女達の為に勉強を教えることを夢見るが、少年に勉強を教えてあげると誘って裸の写真を撮り、児童ポルノ法違反で警察に捕まってしまった。

イジメ、引きこもり、買春、自殺・・・。ここまで複雑で暗く切ない人生の羅列は実社会ではなかなかないが、いずれも実際に社会にある問題である。

しかし、彼らの生き様に後ろ向きな姿勢はない。彼らが決して弱音を吐くことなく自分の人生と向き合っている描写もそうだが、助産婦として新たな生命の誕生と向き合う斉藤くんの母親の姿に、命の尊さを感じるからだろうか。

「子どもは親や環境を選んで産まれてくる」。

借りたい本がなくて、たまたま借りた本。彼らに比べれば遥かに恵まれた自分が人生に腐りかけていることに恥ずかしさを感じる。環境がどうであれ、現実がとうであれ、生きているならば、歩み続けるしかない。

恵まれているとは言えない。幸せとも言えない。それでも、僕は生きているんだ。

斉藤くんとセイタカが、担任の先生の妊娠したお腹を触ってはしゃぐ姿に、僕は静かにエールを送った。



シャイロックの子供たち

50ページほど読んで、あ、この本読んだわと気がついた。

図書館に行くと検索機で読みたい本を探す。その時は、読みたい本が見つからなくて、ふと返却BOXに池井戸潤のシャイロックの子供たちが置かれているのを見つけた。下町ロケットを読んでから、池井戸潤の本は好んで読んでいる。なかなか人気があって、ほとんどの本が貸出中になっている。ラッキーと思って借りてみたものの、だいぶ前に読んでいた。

シャイロックの子供たちは、下町ロケットとは違い、東京第一銀行長原支店を舞台に繰り広げられるなんとも哀愁が漂う人間模様を描いた短編集。出世と世間体とノルマに追われる悲しき人間の性が哀しみを帯びた文体で描かれる。

その中にシーソーゲームという話があって、なんとも言えない悲しさを帯びて幕を閉じる。

「花の咲かない人生というのもあるのだろうか。」シーソーゲームの一文である。誰もが世界にひとつだけの花だと槇原敬之は歌ったが、誰もが花を咲かせるとは限らない。花を咲かせることもなく、雑草として生きるものもあれば、本来なら美しい花を咲かせるはずが、咲かせる前に枯れてしまうものもあるだろう。

枯れてこそ美しい。自分はそんな花かもしれない。


人生に影響を与えた本10選

そんな読書家ではないけれど、他の人がやってたので、まとめてみた。


夢をかなえるゾウ/水野敬也

所謂自己啓発本を読み漁ったけれど、いろんな自己啓発本を1冊にまとめてくれてるみたいな本。トイレ掃除するとか、寄付をするとか、今でも実行している。


トヨタ式鬼十訓/若松義人

トヨタ生産方式の基礎を作った大野耐一の凄さが分かる。仕事に対する向き合い方も、この本で学んだ気がする。


生き方/稲盛和夫

僕がどん底だった時に救ってくれた本。ちょっと宗教チックだけど、人は何のために産まれてきたのか?、生きている意味みたいなものを教えてくれる。


反応しない練習/草薙龍瞬

実はこの本の内容はあまり覚えていない。ただ、図書館で借りて読んで、その後、この本は手元に置いておこうと思って買った本。仏陀のことを書いてる本だけど、宗教的な色合いが少なく、悩める時に読み返したい本。


器つれづれ/白洲正子

自分の周りにも器の好きな人はたくさんいるけれど、器、特に骨董との向き合い方を教えてくれた本。今でも白洲正子の考え方が自分の骨董を選ぶ際の基礎となっている。


下町ロケット/池井戸潤

池井戸潤の傑作。自分はエンジニアではないけれど、仕事に対する熱い思いが湧き上がる本。特にエンジニアであれば必読。


賭博黙示録カイジ/福本伸行

普段漫画は読まないんだが、自分の人生観まで変えてくれた漫画。この本を読んでから、自分の座右の銘がメメントモリになった。


デザインのデザイン/原研哉

デザインに対する考え方の基礎を教えてくれた本。この本を読むまで意匠という意味でしかデザインを捉えてなかったけれど、デザインの意味を再認識させてくれた本。


デザインの輪郭/深澤直人

この本もデザインに対する考え方を変えてくれた本だけど、どちらかといえば自分の生き方をデザインする方法を教えてくれた本。この本を読んで、ある意味デザインとの決別をさせてくれた本。


寂しい生活/稲垣えみ子

比較的最近読んだ本。世の中に便利なものが増えていけばいくほど、なんとなく生きにくい世の中になると感じていた時に背中を押してくれた本。迷っていた自分に精神的な豊かさを気付かせてくれた本。


こうして並べてみると、見事にベストセラーしか読んでないな!と笑けてくる。

人生に悩める人、仕事に燃えたい人、デザインの好きな人にはオススメです。


時給思考

時給思考という本を読んだ。

僕より16歳も若い若造が成り上がって偉そうなことを書いてる本だったが、最後のほうに良いことが書かれていた。

「自由を得るために大切なことは、次の3つです。/佑量椶魑い砲靴覆き⊆分のやりたいことを明確にする7われる勇気を持つ」(株式会社すばる舎発行 金川顕教著 時給思考より抜粋)

著者はこの本でTime is moneyではなく、Time is lifeであると書いているが、まさにその通りだと思う。僕らの命は無限ではなく、普段意識することなく、産まれた時から死へのカウントダウンが始まっている。だから、時間というのは命であると。

命にも等しい時間を、他人のために犠牲にしたり無駄にしている場合ではない。限られた時間を、いかに自分らしく生きるか。そのためには、自分のやりたい事をやるべきだ。人の目を気にしている暇はない。他人がどう思おうが、人に迷惑をかけなければどう思われたって関係ないと思う。

この本では、主に仕事について、収入を上げる方法について、自分がどうあるべきかが書かれていたが、時間が命であると考えるならば、他人の時間も自分と等しく尊い命であると考えなければならないと思う。友達や家族や会社の同僚など、自分の周りにいる人、もしくは、街ですれ違った人やたまたま同じ電車に乗り合わせた人達の貴重な時間を奪うようなことをしてはいけない。人に優しくするとか親切にするということは、その人の貴重な時間=命を尊重することでもある。そうやって考えることができれば、イジメや犯罪やなんちゃらハラスメントなんてことは起こらないはずだ。

自分の人生は自分のものであって、誰のものでもない。他人にどう思われようが、自分のやりたいことをやろう。それで人に迷惑をかけるとか不快な思いをさせてはいけないが、正しいことをしているのであれば、嫌われてもいいじゃないか。まあ、人には好かれた方がいいけど、全ての人に好かれることは、まずないんだから。ただ、他の人の時間も自分と等しく尊い命なのだと肝に命じておけば、人に優しくできると思う。


火車

読みたい読みたいと思っていた宮部みゆきの小説をようやく読むことができた。

今回読んでみたのは、「火車」。普段あまりミステリーなど読まないのだけれど、火車とはどういう内容なんだろうと読み進めると、借金で取り立てに追われて、まさに火の車となった二人の女性を描いた小説だった。以外とそのままなのね。ちなみに火車という言葉には、生前に悪業を重ねた罪人の死体を地獄に連れて行く妖怪という意味もあるらしい。

作り上げられた幸せをつかむために、カードローンを繰り返して自己破産する彰子と、親が背負った借金のせいで自分まで取り立てに合い人生を狂わされる喬子。借金で人生を狂わされた二人が歩む悲しい現実。

しかし、これは小説の中だけの話ではない。実際、現実として借金で苦しんでいるたくさんの人がいる。彼らが借金に苦しむのは、本当に彼らだけに責任があるのだろうか?「自分にも100万円の過払金が返って来ました!」などと爽やかに語っているCMを耳にするが、実際、そんな明るいものじゃないだろう。自己破産する時に彰子が弁護士に語った「私、ただ幸せになりたかっただけなのに、、、」という言葉が身に染みる。誰だって、ただ幸せになりたいだけ。別に贅沢をしたい訳じゃない。人が羨むような暮らしがしたい訳じゃない。ただ、普通の生活がしたいだけ。

かく言う我が家も住宅ローンで火の車だ。35歳で35年ローンを組んだから、70歳まで返済が続く。おー、怖っ!


ビロウな話で恐縮です日記

本を選ぶ時はアマゾンでお気に入りの作家やジャンルで検索して、レビューの評価が高いものを図書館で借りるスタイルだが、最近めんどくさくなって、ブクログの「話題の本」を片っ端から借りている。

三浦しをんさんのビロウな話で恐縮です日記。読み始めた時は、ん?ちょっと失敗した?と思ったけれど、読み進めるにしたがって壺にハマった。破天荒でポジティブで痛快!あまりの脳天気な内容にこちらまで元気になる。あの「舟を編む」を書いた同一人物とは思えない。

この前読んだ稲垣えみ子さんの「寂しい生活」がどちらかというと生き方に正面に向かい合う感じでいろいろ考えさせられる内容で、あれはあれでよかったが、三浦さんの場合は稲垣さんと対局で、欲望のままに生きます!という感じ。

一見正反対のお二人のようだが、共通しているのは、人の目を全く気にせず我が道を歩んでいるところ。お二人とも迷いがないのだ。

今までいろんな本を読んで、いろんな本に助けられてきたけど、もし、何かに悩んだりつまずいたりしている人がいれば、「寂しい生活」を読んでからの「ビロウな話では恐縮です日記」を強くオススメします。


寂しい生活

またまたネガティブなタイトルだなぁ、と思われる方もいらっしゃるだろうが、これは稲垣えみ子さんという方の本のタイトルである。

ご存知の方もいらっしゃるだろうが、稲垣えみ子さんは、東日本大震災での福島の原発事故をきっかけに節電生活を始め、遂にはテレビや洗濯機や冷蔵庫など、数々の家電を手放して月々の電気代150円という驚異の生活を実践されているお方である。

独身だからできるんだろー!、とか図書館発言で炎上したりとか、いろいろツッコミどころもあるが、個人的には大変考えさせられる内容であった。

今の世の中大変便利になって、暮らしはよくなっているように感じるが、実は便利になればなるほど、大切なものを失っているのでは?と稲垣さんは言う。それは「必需品」と呼ばれるものを手放すという生活を実践した体験から自ら感じたことで、説得力がある。

冷蔵庫は、食品の「賞味期限」という概念を完全に覆し、買う必要のない食材を蓄えては無駄にする箱と化しているし、エアコンは、四季の感覚を奪って二十四節気どころか四季さえも感じることができなくなった。

大量生産、大量消費の時代になって、企業は消費者の購買欲を煽って次々と新しい、そして決して必要ではない付加価値のある商品を出し続ける。人々は次から次へと新しいものを求め、その欲は尽きることがない。今度はあれが欲しい、これが欲しい、あれが食べたいこれが食べたい、あそこに行きたいと欲望のままに生きる。果たして、どこまで行けば今の自分に満足できるのだろう。

しかし、本当はみんな気付き始めている。本当に満たされた人生とはそんなものじゃないということを。欲望を埋めることでしか満足を得られない人生は寂しい。寂しい生活とはそういうことだろう。




ロングテール


ロングテールっていう本を読んだ。

下のグラフで左のほうで上に伸びてるところが、いわゆるヒット商品。それに対して、右のほうに伸びてる、たいして売れていない多くの商品のことをロングテールという。

例えばベストセラーの本だとか、ミリオンセラーの曲なんかは、実際に発売されている(自費出版やインディーズも含めて)本やCDのわずか数パーセントに過ぎない。一昔前までは、本やCDはお店で買うものだった。お店は規模の大小はあれど、棚数には限りがあるから、売れる商品を優先的に置く。実際には店頭にも並ばない作品は山ほどあった。ところが今はインターネットの普及でわざわざお店で買う必要はなくなった。今は音楽はiTunesで好きなだけダウンロードできるし、本もKindleで買うことができる。これまでは在庫の心配をしなければならなかったが、データを売るから在庫の心配もない。僕自身、本はAmazonでレビューを参考に読んでるし、音楽もSpotifyが好みの音楽を流してくれる。ホントに便利な世の中になったものだ。

しかし気をつけないといけないのは、あくまでこの本はビジネスについて書かれているということ。確かにネットでこれまで以上に多くの情報を享受することができるようになったが、リアルではないのだ。この前参加したDesigning Humanityでもシンギュラリティの話が出ていたけど、AIがお袋の味を完璧に再現できるようになっても、それは、決してお袋の味とは言えないだろうみたいな話があった。僕らが得ることができるようになったのは情報でしかない。体験は別の話。でもホントに大切なのは、体験だ。体験ということとは少し違うけれど、例えば家族やペットと過ごす時間は、いくらインターネットやAIが発達しても、それに変わるものにはなり得ない。

デジタルに流されてはいけない。これからは、それぞれがアナログとデジタルを見極めていかないといけないんじゃないかな。



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